【DAY9】30万円の軍資金と大きな勘違い。プロモデルの罠と「初心者セット」の真実
妻・由香からの「30万円の投資」という名の強烈なプレッシャーを背負った翌日。 私は会社のデスクで、昼休みにこっそりとゴルフ雑誌を広げていた。
軍資金30万円を手にしたアラフィフ初心者が、冷静でいられるはずがない。私の目は、雑誌に載っているあるページに釘付けになっていた。
「ヒャッホー! これ、あの有名プロのモデルだ!」
私が目をつけたのは、298,000円の高級クラブセット。「石川遼プロモデル!」の文字が眩しく輝いている。 ……正直、有名プロなんて石川遼とジャンボ尾崎くらいしか知らないが、プロのモデルなら間違いないだろう。この高級クラブさえあれば、接待ゴルフも劇的に上手くいくに違いない!
私がデスクで一人、興奮のあまり変な声を出した、その時だ。
「U-ZOさん、そのクラブはまだ早いですね」
背後から、営業3課の英樹(ベストスコア75)が、私の肩越しに雑誌を覗き込んで冷ややかに言い放った。
私「ん?? なんでだよ! 石川遼プロモデルだぞ!」
英樹は呆れたようにため息をつき、こう言った。
英樹「初心者が陥る一番の罠ですね。必ずしも『高いクラブ=良いクラブ』ではありません。プロモデルは、プロの筋力とヘッドスピードに合わせて重くて硬い設計になっています。初心者が使うと、重すぎて腰を痛めるか、まったくボールが上がりませんよ」
また腰か……。 英樹の容赦ない正論に、私の高級クラブへの憧れは一瞬にして打ち砕かれた。
私「じゃ、じゃあ……こっちの『初心者用フルセット 59,800円』にするか?」
私は慌ててページをめくり、手頃なセットを指差した。これなら予算も余るし、妻にも「安く済んだ」と報告できる。
英樹「……悪くはないですが、おすすめしません。最初はいいんですけど、少し打てるようになってくると、物足りなくなって『すぐ買い替えたくなる』のがオチです。結局、安物買いの銭失いになりますよ」
私「えっ、じゃあどうすればいいんだよ。30万円握りしめて途方に暮れろって言うのか?」
英樹「せっかく奥さんから十分な予算をもらったんですから。これから本気でゴルフを楽しむなら、プロの真似でも安さ重視でもなく、**『U-ZOさんに合うクラブ』**を見つけに行きましょう」
私「合うクラブ?」
英樹「ええ。ゴルフショップに行って、実際に数値を測って選ぶんです。今週末、一緒に行きましょうか」
英樹の言う「自分に合うクラブを見つける」という新世界へ、私は足を踏み入れることになった。 とりあえず今日は、週末のクラブ選びに向けて、デスクの引き出しにしまってある湿布の在庫を確認しようと思う。