【DAY11】未知の怪物「ドライバー」登場! 歓喜の213ヤードと悲劇の空振り
「U-ZOさんのスイングに合う『シャフト』を探してるんです」
ゴルフドォ?有田店の試打ブース。 英樹がボロボロの中古7番アイアンを私に振らせた理由は、私に最適な「シャフト」を見極めるためだった。
英樹「データを見ると、U-ZOさんは大したスポーツ経験もないアラフィフなのに、7番アイアンでのヘッドスピードが『33m/s』も出ています。これ、初心者の平均よりしっかり振れている数字で、意外と速いんですよ」
私「ふふん、まだまだ若いもんには負けんよ」
英樹「ただ、年齢的なことや腰痛持ちであることを考慮すると、スチール(金属)シャフトは体への負担が大きすぎます。なので、打撃の衝撃を吸収してくれる『カーボン』が良いですね」
私「なるほど、カーボンは柔らかくて体に優しいんだな」
英樹「いえ、そこが初心者の勘違いしやすいポイントです。実は『同じ重さ』で作った場合、カーボンはスチールよりもガチガチに硬くなる特性があるんです。だからこそ、スチールよりも軽く作れて、かつスイング中の負荷に負けない強さを出せるのがカーボンの強みなんです」
私「へぇ、軽いのに強いのか」
英樹「そうです。そして次に大事なのが『フレックス(硬さ)』です。U-ZOさんには、カーボンの中でも硬めの『S(スティッフ)フレックス』がベストです」
私「S(スティッフ)? Sってなんだ?」
英樹「シャフトの硬さを表す記号です。初心者がショップに行くと必ず目にするアルファベットなので、覚えておくと便利ですよ。一般的に柔らかい順からこうなっています」
- L(レディース): 女性向け。一番柔らかく、力がなくてもシャフトのしなりでボールを飛ばせます。
- A(アベレージ)※またはM: LとRの中間。少し力のある女性や、シニアゴルファー向け。
- R(レギュラー): 一般的な男性向け。標準的な硬さです(ヘッドスピード38〜40m/s程度)。
- SR(スティッフ・レギュラー): RとSの中間。Rだと少し柔らかいけど、Sだと硬すぎるという方向け。
- S(スティッフ): 少し硬め。ヘッドスピードが平均より速めの男性向けです(40〜45m/s程度)。
- X(エキストラ・スティッフ): 非常に硬い。プロや筋力に自信があるハードヒッター向け。思い切り振ってもシャフトが暴れません。
英樹「U-ZOさんは初心者ですが、ヘッドスピードは平均以上あります。ここで『初心者だから標準のRでいいや』と選んでしまうと、スイング中にシャフトがしなりすぎて(柔らかすぎて)フェースの向きがブレてしまうんです。だから、速いスピードに負けない『S』がベストなんですよ」
奥が深い……。単なる棒だと思っていたが、クラブ選びの心臓部はこの「シャフト」だったのだ。
アイアンのスペックが決まると、英樹は別のコーナーから、見たこともない巨大なクラブを数本抱えて戻ってきた。
英樹「次は『ドライバー』を選びましょう。一番ボールを遠くへ飛ばすためのクラブです」
私「……デカっ! そして長っ!!」
7番アイアンとは次元が違う。ヘッドはまるで小さなメロンのように大きく、シャフトは杖のように長い。こんな怪物みたいなクラブ、本当に私に振れるのだろうか。
英樹「ドライバーはティショット(1打目)専用で、コースの中で最も飛距離を稼ぐための武器です。長く見えても意識しなくて大丈夫ですよ。7番アイアンの時と同じように、ゆっくりコンパクトに振り抜いてください」
言われた通りに構え、息を吐く。 あの野方ゴルフガーデンでひたすら繰り返した、地味なハーフスイングのドリルを思い出す。大振りせず、ゆっくりと……エイッ!
「カキィィン!」
心地よい金属音と共に、ボールはやや右方向へ勢いよく飛んでいった。 シミュレーターの画面を見ると、ボールの軌道がぐんぐん伸び、最後にデカデカと数字が表示された。
『飛距離:213ヤード』 『ヘッドスピード:41.2m/s』
私「に、にひゃくじゅうさんヤード!? 本当に俺が打ったのか!?」
英樹「おおー! 初めて打った球にしてはナイスショットです! 芯を少し外して右に飛びましたが、ヘッドスピードが41.2m/sも出ているからこその飛距離ですね。ここでも、あの地味な練習の成果がしっかり出てますよ」
私は完全に調子に乗った。 なんだ、ドライバーなんて簡単じゃないか。軽く振って200ヤード超えなら、フルスイングすればプロ並みに飛ぶに違いない!
私「よーし、次はもっと飛ばしてやるぞ!! ドリャァァァ!!」
マン振りで迎えた2打目。 「ブンッ!!」という風を切る音だけが虚しく響き渡り、ボールはティーの上で静かに鎮座していた。
……空振りである。 アラフィフの顔から火が出るほど恥ずかしい。
英樹「……だから言ったじゃないですか。慌てちゃダメです。ドライバーは長いクラブなんですから、ゆっくりリズムに合わせて振り抜くことを絶対に忘れないでください」
冷ややかな英樹の視線を浴びながら、私は深く反省した。ゴルフにまぐれはあっても、奇跡は続かない。
その後、冷静さを取り戻した私は、数々の有名メーカーのドライバーを試打させてもらった。 どれも一長一短があったが、最終的に私のスイングと一番相性が良かったのは『PING(ピン)』というメーカーのドライバーだった。
私「なんかこれ、一番まっすぐ飛ぶ気がするんだけど」
英樹「正解です。PINGのクラブは『直進性』が非常に高いのが特徴なんです。芯を外したミスショットでも、左右のブレが一番小さく収まっていましたよ。初心者の強い味方です」
ミスに強い。なんて素晴らしい響きだろう。 こうして私の初めての相棒は、カーボンのSシャフトが刺さったPINGのクラブたちに決まりそうだ。
次号に続く