【DAY6】お小遣いの限界突破。野方で悟ったハーフスイングの魔法と100ヤード越え

【DAY6】お小遣いの限界突破。野方で悟ったハーフスイングの魔法と100ヤード越え

営業3課の英樹(大学ゴルフ部出身・ベストスコア75)から「フルスイング禁止令」を言い渡されて数日。私は再び、野方ゴルフガーデンへ向かった。

頭ではわかっている。だが、お小遣い制のアラフィフにとって、練習場のボール代は死活問題だ。 券売機の前で迷う。いつもなら500円で70球打って、さっさと帰る。しかし、英樹に教わったあの地味な「ハーフスイング(9時から3時)」のドリルを身体に叩き込むには、絶対的に球数が必要だ。

私は意を決して、野口英世を1枚吸い込ませ、1000円で140球のボタンを押した。 ……今月のお小遣いが、静かに音を立てて削られていく。

打席に入り、英樹に教わった通り、スタンスを肩幅に狭める。 クラブを時計の9時の位置まで引き、3時の位置でピタッと止める。

地味だ。恐ろしく退屈だ。 周りのおっちゃん達がドライバーで豪快に飛ばしているのを見ると、どうしてもフルスイングしたくなる衝動に駆られる。それを必死に抑え込み、ひたすら「9時・3時」の振り幅だけを繰り返す。

しかし、50球を超えたあたりから異変に気付いた。 空振りがまったくない。 あの忌まわしき「ペチッ」というシャンクの快音も、今日は一度も鳴っていないのだ。

ボールが、鈍い音ではなく「カツッ」という心地よい音とともに、真っ直ぐ前方へ飛んでいく。 練習が進むにつれ、クラブの芯でボールを捉える感覚、いわゆる「ミート率」が劇的に上がっているのが自分でもわかった。

そして100球目を超えた頃だった。 力まず、軽く9時から3時へ振っただけのボールが、ふわりと綺麗な軌道を描き、そのままスルスルと伸びていった。

ポトッ。 ボールは、100ヤードの看板を軽々と越えて落ちた。

「……嘘だろ。ハーフスイングなのに、100ヤード飛んだぞ」

信じられない感覚だった。渾身の力でガニ股フルスイングをしていた時は、あんなに右へ左へ飛んで10ヤードしか転がらなかったのに。 「ただのフルスイングは意味がない。ドリルの積み重ねこそ近道」 少し生意気な後輩、英樹の言葉の本当の意味が、ようやく理解できた瞬間だった。

帰り道、自販機で買った「リッチコーヒー」の甘さが、今日はやけに美味く感じる。 財布の中身は寒いが、心には確かな手応えがあった。接待ゴルフという名の処刑台を回避するための、一筋の光が見えた夜だった。

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